03.背中




あの…すらりと伸びた背中…。
というか、背筋?
本人は向こうを向いて資料を探しているけれど。

しなやかなその背中は、すごくすっきりとして見えて。
じっと見つめていても、いい目の保養だ。
あ。
こっち向いた。

「大佐、この資料ですけど…」

こっちを向いた彼女は、金の扇の下から覗く鳶色の視線を向けた。
化粧は薄く、しかしはっきりとした顔立ち。
金糸をバレッタで止めた頭。白く覗く項には送り毛が色気を誘う。

「そこに置いておいてくれ」

慌てて手元の書類に視線を移し、さも当たり前のようにペンを書面に走らせる。
顔も上げずに、それだけ。
中尉は机の端に、崩れないようにファイルを重ねて、そのまま出ていこうとする。

「失礼します」

「中尉」

彼女の足が止まり、扉の前でこちらを振り返った。

「あと少しで区切りがつきそうだ。何か入れてきてくれ」

言うと、机の上の書類の山をまじまじと検分された。
そしてため息。
呆れたような物言いで…。

「わかりました。このペースなら、今日は定時には終わるそうですね」

頭を下げて、彼女はそのまま退出した。
残念ながら、閉じられた扉によってその背中は見れなかった。
机の上にペンを転がして、背もたれに体重を預ける。
背中…
あの弓のように反り返る…。
息も継げぬ程の熱のなかで、あの背中のしなる姿を追い求める。
ベットが軋む音に責め立てられ、彼女の背中をどれだけ反らせられるか…。
感情よりも、気付けば一瞬だけ、それを求めている自分がいる。
制服の上からでも、見て思い出してしまう。
そんな自分を見付けてしまい、どこからか笑いが込み上げてくる。
そういえば、彼女は明日は非番だったな…。確か私も遅番で良かったはず…。
口の端が自然と釣り上がってしまうのを感じる。
とりあえずは、夕食を誘って。
今日はさすがに断られる訳にはいかないから、本気で誘わなくてはいけないな。
あとは、そのまま彼女の家に行ってしまえばコッチのものだ。
本当なら、ウチに連れ込むのがいいのだが…ブラックハヤテ号がいるし、断られるな。
今日の夜は楽しく過ごせそうだな…。
トントンッ
あ、中尉だ。
やばい、書類終わらせてないじゃないか!

「失礼します」






END



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