07.涙




私は泣いてなんかいないのに、次から次へと流れてくるんです。

貴方の頬を立った一筋流れたものは、それっきり塞き止められてしまったけれど。
私の涙腺が緩んでしまったんです。
苦しくて苦しくて、どうしようもないんです。

貴方の前だというのにも関わらず。
だからといって静かに泣けるわけではなく。
あの人が流した大量の血と、あの人の奥さんが流した大量の涙が…
まるで私の胸で私の息を阻むように。
私の呼吸を乱すんです。

貴方の上着にすがりつくように指を絡めて。
額を強く押し付けて。

喉の奥から出てくるのは、苦し紛れの嗚咽しかない。
叫ぶだけのものも持ち合わせない私に、貴方が優しくしてくれる理由はありません。
できるなら、こんな私のことは忘れて、あの人を…。

貴方が壊れてしまわないように。
どうか、貴方が壊れてしまわないように。

私が涙を流す理由。



どうか、貴方が壊れてしまわないように…。






END



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