21:働




「働いて、働いて、働いて…そのままあの人の為に死ねたら幸せね」

そのセリフに、間抜けにも俺の口はぽかんと開いたままになっていた。
両手に大量の資料を持って歩く彼女の口振りは、
「夕方のタイムサービスまでに仕事が片付くといいわね」というのと同じだった。
あまりに淡々とこの人が言うんで、俺は怖くて堪らなくなった。
だってホークアイ中尉は自分のことを働き蜂のように言うのだ。
俺には信じられない。

「中尉にとって『働く』ってどういう…」

「崇拝。全ての愛を傾けた先に生まれる行為…かしら」

俺がじっと見つめているのに気付くと、彼女はちょっとだけ苦笑いした。

「ごめんなさい、忘れて」

そうして再び歩を進める。

「崇拝って、…じゃあ大佐は中尉にとっては神様だとでも?」

茶化した風に言った筈なのに。
…彼女の瞳は真摯なものだった。

「神にしては…人情に厚いけれど…。それは貴方もよく知っているでしょう?」

俺には彼女の目を裏切るなんて事できなくて、茶化して返せなくなった。
おかしい、いつの間にこんなペースに…。
この場にはいないのにも関わらず、この場の空気を支配している人物に心の中で毒づいた。
この人の心の中をただ一人支配する男は俺にとっても上官だ。
どうもウマは合わないけれど…。

「貴方は?」

「俺は…大人じゃないから、働く事に意義を持ってるわけじゃない」

「嘘。だってエドワード君が軍の狗と罵られながらも国家錬金術師でいるのは、
誰でもない『彼』の為でしょ?」

綺麗な顔してさすが鷹の目。
彼女には何もかも全部お見通しだってことか。






END



ロイアイと兄弟愛な話…のはずなんですが。
見方を変えれば、エド→ロイ←アイにも見えなくはないですが…(遠い目)

もちろん、『彼』というのはアルです(笑)

気侭に徒然。UP 2005・09・12
         2005・12・16
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