* 愛しい我が副官殿へ *




「大佐ぁー、まだですかー?」

ベッドの上で転がりながら、リザは受話器に耳を傾けているロイに声をかけた。
チラリと彼女を向いたロイは、左手の人差し指を口元にあてて見せた。

『静かにしていたまえ』

彼女の口元が、への字に曲がる。
シーツを巻き付けてベッドを出て、ソファに放り投げられている箱の中から、棒ファーをスルリと抜き取る。
イブニンングドレストセットについさっきプレゼントされたものだ。
真っ白の毛皮で、別の国にしか生息しない動物の毛皮らしい。
その動物は見たこともないが、毛の肌触りが気持ちよくて、リザはそのファーをシーツの代わりに腕に絡める。
ふわりと温かい。

ロイはというと、メモまで取り出して何やら話はどんどん深刻化しているようだ。
いつもならその横で待機をしているはずの自分が、今は彼が自分を置いて仕事の電話をしていることが気に入らない。
今の自分はもう軍服どころか何も服を着ていないのだから、
少なくとも『中尉』としての自分を今だけでもやめたいのだとリザは思った。

(こんな珍しいこと、もうないかもしれないのに)

心のどこかで、女としての自分を彼は必要としていないのではないかと、弱い自分が呟いた。

「寝ちゃいますよ!?」

少し大きな声でリザが言うと、驚いたようにロイが振り向く。
ファーを纏い、ベッドにうつぶせに寝転がったままロイを見る彼女は、すごくご機嫌斜めで。
ついつい、彼は噴出しそうになった。
受話器のむこうの相手にバレないようにと必死で笑いを堪える。

「あぁ、いや、大丈夫だ。…ん?あぁ、じゃぁ頼んだぞ。」

ロイは短く無理矢理電話を切り、メモをサイドテーブルに投げた。
すでに最初からボタンなど全て空いていたシャツを、ソファの背にかけて、そのままベッドに片膝をつく。

「リザ、仕事の電話だということは…分かっていた筈だ」

「はい。先日のテロによって破壊された、講堂の修理の人員・日数・予算についてですね」

裸でファーを絡めながらうつ伏せのままで。
自分の髪を梳きながら言ってのける。

ロイは呆れた風に、その頤に人差し指をかけた。

「尻尾を振るのはいいけれどね、ご主人様の仕事の邪魔は良くないね」

睨むわけではなく、半眼で舐めまわすようにリザを見下ろした。

「今の私に『補佐官』を求められるのでしたら、すぐに軍服を着てその背中を蹴らせていただきますが?
さっきの話、急ぎでしょう。本当ならあんな電話で用が足りるわけないのですから」

一瞬、鷹の目が彼を射た。
それは紛れもなくロイの副官の目で。

瞬きをした次に目にした彼女の目とのギャップに、ロイはただただ苦笑するしかなかった。

「妬いてるんだ?」

そこには、捨てられた猫のような、媚びとは違う、けれど確実に彼を求めるような色があった。

「妬いてますよ」

そうして、呟いた唇はいつもよりピンクがかっている。
先月彼がプレゼントした挙句、箱を空けもせずに化粧台に仕舞われたまま先日まで全く動かされた形跡がなかったという、
高級ブランドのルージュだ。
かすかに甘い香りが漂うのは、揃いで渡してルージュと同じ運命を辿ったという、同じところの香水。

彼女なりの自己主張に、彼は嬉しくて彼女に口付けた。

「『自分』に妬くのはやめたまえ。
今は階級など関係ない。
俺は『女の君』が、欲しくて欲しくてたまらないんだから。」








END



裏のdiaryにかいたもの。
別に大したことないかと思い、表にUP。
このままエロ書く根性はなかったと思われる。

珍しく、媚びるリザさん。

2004/11/23 裏日記UP
2005/01/05


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