* 保護対象 *




湿気が多い。
しっとりとした空気のなかで、隣りに眠る彼女の肌をそっと指の腹で撫でる。

「んっ…くすぐったいです…」

「やっと起きたかね」

寝顔が見たくて黙っていたのは私だが、それでも彼女にしては珍しく良く寝ていた。
昨日の演習が強い日差しの中で長時間行われたのが、原因の一つではなかろうか。

「…大佐?」

ぴくりと瞼が動き、それがゆっくりと開かれる。
焦点のあっていない焦げ茶色の瞳が、少し充血していた。

「おはよう」

優しく微笑んで抱き寄せた。
その辺のご婦人方に使うのとは別の顔。
彼女相手に、表情をわざわざ作る理由はない。
微笑みなど、自然にこぼれてくる。

「…外…何か音がしませんか…?」

ぽつりと返って来た返事は、抑揚がない。
寝起きの彼女特有のもの。

本人は否定するが、彼女自身朝は弱いのだ。
しかも、それは私といる時だけ。
仕事で司令部に泊まっている時も、そんな話は聞いたことがない。
不思議に思って他の奴等にも聞いてはみたが、逆に驚かれた。

結局のところ、私の都合のいいように解釈すると、私の側が一番安心できるということなのだろう。
どうせ本人に聞いたところで、素直に答えるわけがないのだ。

「ん?あぁ、雨だからな」

「雨…?」

雨という一言に反応したらしい。
さっきまでと少し様子が違った。
どこか落ち着かない様子で、もぞもぞと指をシーツに絡めだす。

「だが、どうせ今日行くのはオペラだ。
野外じゃないし、問題はな…」

「あぁ、だめ…司令部に行かなきゃ…」

突然、そう言って身を起こしだす。
逃がすまいとその体を抱き締めて、ベッドに縫い付けるように押し倒した。

「司令部?今日は非番だろう」

言外に含まれる、微かな苛立ちにも彼女は気がつかないのか。

「でも、行かなくちゃ。あの人が…」

…あの人…だと?
誰の事だ?

常に彼女は私を一番に考えて行動している。
そして私はそれを知っている。
思い上がりなんかではなく、間違いない彼女の中の絶対的な真実だ。

その私が隣りにいると言うのに。

「…私よりも、誰を優先させる気かね。ホークアイ中尉?」

少し悔しくなり、引き寄せて額近くの髪の付け根に口付ける。
いまだ虚ろな瞳は、私を捕らえているのかいないのか。
雨の降り行く窓を見つめて、その白い手を伸ばしてつぶやいた。

「…あの人が無能になってしまう…」

さも当たり前の最重要事項かの如く。
切な気な表情で、泣きそうになりながら彼女は言う。

…頼むから、さっさと覚醒してくれ!
寝ぼけるにも程があるっ!!






END



最近こっちを更新していない事にようやく気付きました;
気侭に徒然にUPするだけして終ってた…。

実はコレの前に何かいてたのかわかりません。
履歴が残ってないので、どうしようも。
わーん、どうしよう;

2005/05/09 気侭に徒然。UP
2005/09/13


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