* 矛盾でないのに *




目の前に飛び込んできた風景は、今だって忘れられない。
真っ赤な、真っ赤な、血。

「リザ!」

ロイの声がどこか遠くで聞こえるようで、意識が遠のくのを必死で繋ぎとめる。
足が震えて、膝が今にも力なく崩れそうだ。

父の血が、私の視界を真っ赤に染めていく。

軍服を着ているロイの姿。
先日学校を卒業したんだった…そうよ、もうこの人は軍人。
父が最も嫌いだった、軍の狗。

「リザっ!!」

力なく扉にすがり付くように立っていた私は、一歩後ずさった。
父を助けなくてはいけない。
でも、もうこの人を信用していいのかどうかわからない。
これまで弟子としてこの家に出入りしていた頃の、ロイが記憶の中で微笑む。

笑わないで。
微笑みかけないで。
そうやって私を惑わそうっていうの?

「リザっ、師匠がっ!医者を呼んでくれ!!」

はっと、して目が合った瞬間、彼の漆黒の視線に捕らえられるように何かが噛み合った。

強い意志。

そう、知ってるじゃない。
この人を、私は知っているじゃない。
疑う余地が、どこにあるっていうの…?

背中の陣がじんと熱くなる、父の刻んだあの焔の陣が。
何かを託されたように、重みを増した。
ぎゅっと目を瞑って、玄関へと走り出す。

あぁ、私は受け継いでしまった。
父の残したこの研究のすべてを。

受話器を握り締め、医者が受話器を取るまでの数秒間。
助かってほしいと祈りながら、どこかで一秒ごとに痛む背中のそれを感じていた。
人の命をも簡単に奪ってしまう最強のそれを、父のすべてを糧にして。


なんて、最低な等価交換。




END



一年以上前に書いてたものを発掘。
気侭に徒然。には一度UPしてたはず・・・。

2007/07/18


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