* トケル *




柔らかく撫でられた頬が、あたたかかった。
伝わりあう体温を感じ取るようにして綻んだのは、
強く強張っていたはずの、私の微笑み。

「ごめんなさい」

溶かされていく心からこぼれ出た言葉に、一番驚いたのは私自身。
感情が、頭を通らずに直接口から出て行ってしまう。
これじゃ、まるで子供みたいじゃない。

「私をこんなにも待たすなんて、君くらいだよ。」

「私じゃない女なんて、『待たない』じゃないですか。」

ここ数日、毎朝キスマークを付けて出勤していた男に告げる。
私以外の誰かを『待ってでも手に入れたい』と思わない男だなんてこと。
私は知ってるんですよ。
だから、凍ったような指を更に頬に押し当てて。
私なんかを待っていてくれる彼の手のひらに、温もりごと頬を擦り付けて。

「あたりまえだ」

その自身ありげな、とんがった唇に。
ほんの少しだけ、口付けた。

嬉しそうな顔が可愛いから、もう一日お預けもいいかもしれない。




END



古いものが出てきました。
一年前にサイト改装したくて、その時にお試しに書いていたらしい。

2008/04/02


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