* ささやかな時間 *




「少将、このような所でお休みになられては…」

あまりにも聞きなれた声が、うるさい。
廊下で寝てるわけでもなし、この部屋は執務室だ。充分暖かい。
このまま眠っても凍死するわけでもないというのに。
この男の口煩さは、絶対あの嫁に似たな。
可愛い顔して、私相手でも容赦しないのだ。

「アームストロング少将。
 狸寝入りは結構ですが、このままでは明日の会議で顔に服の皺が付いたままになります」

「なるわけないだろう」

このままうだうだ言われるのもうっとおしくて、バサリと長い髪を払って頭を起こした。
褐色の肌の男は、サングラスの奥で少し目元を緩めた。

こいつのこういうところが嫌いだ。
私は、お前の妹なんかじゃないんだぞ。
朗らかな空気で私を見るのはやめろ。

「お前は戻らないのか?」

イライラしたものを叩きつけないように尋ねる。
机上の書類をそのままに、コートかけから上着を取りながら答えを待っていると、横からそれをひったくられた。
いつものようにマイルズがそのまま私に着せる。
こうやっていちいち着せられるのも面倒なんだ、本当は。
そして私がそう思っているのを知っていながらわざと着せるヤツに腹が立つ。

「帰ってくるなと言われまして」

「は?」

確か、マイルズは今日は早番だった筈。
夜勤の人間でもない限り、この時間にいるのはおかしい。

「妻に『アームストロング少将がまだ働いていらっしゃるのに、帰ってくるとは何事だ』と。」

そう言っている『彼女』の姿が容易に目に浮かぶ。
しょぼくれた子犬みたいになっているマイルズに、さっきまでの悔しさはどこかへ吹き飛んだ。
どちらが子供だ。
女の一言にここまで左右されるなんて、ザマア見ろ。

「つまり、さっさと私を私室へ戻らせて寝かせたら、お前は堂々と帰れるというわけだ?」

「…そうです」

にやりと微笑んでやると、ヤツはほんの少しだけ口の端を引きつらせた。
この私相手に、そんな表情が出来るとはいい度胸だ!

「よし、酒を持って来い!朝までお前の話を聞いてやろう、積もる話もあるだろう?」

楽しい時間は、これからだ。




END



これも一年前の改装……しようと思って使わなかったもの。
唯一のマイオリ?オリマイ?ですよ。
詳細もよくわからなかった感じで、雰囲気のみで書いたものです(笑)

2008/04/02


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