* One bit of world.[ためしよみ] *




ざくり、と。

口にしてしまえば、それはきっとこんな音だったのだろう。
痛みとか、苦しみなどとは程遠い所に生きていたかのようなあの人の、
それはあまりにも突然な出来事であったように思える。

「・・・・・・出来るでは、ないですか」

けれど、貴方は最後まで残酷で、
剣を突き立てたちびっこの方が胸を潰されたという顔をしているではないか。

なんて気高く、純粋で・・・罪深い人。・・・いや、鳥か。

自らが育てた救世主の手によって喪えるという現実は、
もしかすると貴方自身の予想内の出来事でしかなかったのでは、
と私に思わせるその性格は、初めて会った時から変わることもなく。

そうして最後までその心の内側にあるヒトカケラさえも、私に見せてくれることはなかった。

それが、私の意思を知っていてわざとそうして見せたのか、全く知らなかったのか。
それさえも理解することは出来ずに終わってしまったが。

私と貴方の関係性を考えれば、それはきっと正しい決断でしかない。
いつも貴方は正しくて、貴方のすること全てが正義だった。
その正義自体が歪んでいるかもしれないなどということさえ、思いもせずに。
・・・いや、本当は心のどこかで薄々感づいていたのかもしれない
。勘のいい貴方のことだから、歪みなんてわかったうえで。
だからと言って今更それを歪みだと認めることを許せない信念が、
結局貴方とあのちびっこを最後までレールの上に括り付けていた。

逃げ出すことも許されず、ただただ天に両手を伸ばして切なそうに眉根を寄せる姿が、私には見える。
誰にも、自分自身にも許されることを求めなかった貴方を・・・。


本当は、知っていたんですよ。
私は。
貴方は求めてはくれなかったけれど。




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コピー本【One bit of world.】のためしよみです。
冒頭部分の1ページ。


2007/04/01 コピ本発行
2007/07/31


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