* バケモノのツクリカタ *




陽に、てのひらを透かしてみた。
実際問題、僕の手は間違いなく存在していて、透けはしない。
ただ、照らされて赤く見えるてのひらを見ると、何故だか少しだけ安心した。

僕は、血の通う人間だ。

『救世主』と呼ばれようとも、普通とは違う力があろうとも。
ケガをすれば血が出る、人間だ。

誰かが誰かを傷つけたり、殺したりする世の中で。
僕だけが特別で、僕だけが人を殺してもいいだなんて。
そんな理屈は、間違ってる。

昨日手に掛けた『罪人』が、『救世主』だったら。
あたりまえと称して殺されていたのは、僕の方だったのかもしれない。
『救世主』でなければ、『人』を殺さなくてはならないという義務に、縛られることはなかったのかもしれない。

「花白……」

視界の端から僕を呼んだ声に、視線だけをやる。
重いマントと剣を身につけた幼なじみが、中庭の廊下に立っていた。
馬鹿みたいに真面目な顔で、馬鹿みたいに顔に『傷ついてる』と書いている。
馬鹿な、幼なじみ。
僕もアイツも、同じ人間なのに。
立場が違うというだけなのに。
僕の気持ちは、アイツにはわからない。

中庭と廊下のこの距離ならば、目の腫れなんて見えないだろう。そう、願う。

「白梟殿が、呼んでいる」

あぁ、ほら、また。
言われる事なんてわかりきっているからこそ、そんな顔するんだ。
僕が人を殺したくないことを、知っているから。
だけど、それが『救世主』の仕事だから。

「わかった。
 手を……洗ったら、行く……」

「手?」

「………まだ、血の臭いが取れないから。
 後で行くって、白梟に言っといてよ」



一番最初に、きちんと行った『仕事』の時に気になった、その臭いは。
その後、回を増す毎に薄れていった。
胸の痛みも、感情も、反応するのを嫌がるように。
五感の全てを塞いで。
人間としてのいろんなものが、麻痺しているみたいに。



もう、僕は『人間』じゃない。




END



な、何となく。
花白独白チック。
突発で浮かんできましたが、折角ならその勢いでノルマクリアしちゃえばよかったね。私。
………逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ!(お前がな)

トリトリ書いたら、長くなりそうな気がして……;
携帯からだと、長さの感覚がなくて、困るのです。
うぎゃあ。


2008/02/05 SNSにUP
2008/04/02


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